自動編曲・アレンジに関する研究

研究概要

既存の楽曲から、その演奏形態やメロディを目的に応じて作り変えることはジャズやポピュラー音楽、クラシックなどでも広く行われています。編曲には作曲と同じように知識や経験が必要ですが、コンピュータがそれを支援することを目的とした研究が広く行われています。編曲はその対象や目的によって方法論も様々あり、当研究室でも様々な視点・アプローチから自動編曲の研究に取り組んできました。

♬ アンサンブル譜の自動生成

この研究は2009年度修士課程修了の水野理央さんが主に取り組んだ研究です。ピアノ譜と所望の編成(楽器構成)が与えられたとき、そのメロディに合い、それぞれの楽器が演奏可能な伴奏や副旋律を生成するとともに、楽器が途中で入れ替わりすべての楽器が活躍できるようなアンサンブル譜を自動生成します。MIDIデータによるピアノ譜を入力すると、その場でアンサンブル譜を作成(PDFファイルとして出力可)し、演奏可能なデモシステム「MusicPipe」を開発し、インタラクション等でも発表しました。

♬ 自動ジャズアレンジ

この研究は2015年度修士課程修了の佐藤直人さんが取り組んだ研究です。ジャズアレンジのうちでもとくにメロディそのものをジャズらしく変形する自動アレンジを目的としています。まず、第一段階目としてジャズアレンジの重要な要素であるリズムを変形させる手法を提案しました。まず、原曲とジャズアレンジされた曲のペアからなる多数の事例データを用意します。ジャズらしいリズムの変形ルールを、一定の長さで区切られたリズムパターン間の変化として考え、既存の事例データを利用して任意のメロディに対してジャズ特有のリズムに変形させます。

♬ 自動オルゴールアレンジ

この研究は2022年度修士課程修了の松本さんが取り組んだ研究です。一般的に流通しているシリンダーオルゴールを対象に、与えられたメロディからオルゴールの構造的制約を満たすメロディに変換します。シリンダーオルゴールは回転する円筒上のピンを一定個数の弁(固有の音高が鳴るように作られた金属板)ではじくことで発音します。構造が単純で弁の数も限られているため、音域が限られ、連続して同一の音高を鳴らせないなどの構造的な制約があり、それを満たすような音符列の変換をニューラルネットワークを用いて実現しました。

♬ ファミコン音楽の自動編曲

この研究は2022年度収支課程修了の小木曽さんが取り組んだ研究です。任天堂のファミリーコンピュータに代表される当時のゲーム音楽は、そのハードウエア(音源モジュール)の制約から特徴的な電子音(矩形波や三角波など)の組み合わせでBGMや効果音が作られていました。その独特の音楽はゲームの音楽の枠を超えてファミコン音楽風に作曲することや既存の楽曲をファミコン音源用にアレンジするなどされ、一つのジャンルとして確立しています。この研究では、既存の楽曲をファミコンの音源で再生可能な楽曲に自動でアレンジを行うことを目的として、その変換をニューラルネットワークを用いて実現しました。

関連文献

  • 佐藤 直人, 酒向 慎司, 北村 正, "自動ジャズアレンジにおける曲の統一性を考慮したリズム転写", 日本音響学会2014年秋季研究発表会, 2-4-19, pp. 945–946, Sep. 2014.
  • 佐藤 直人, 酒向 慎司 北村 正, "自動ジャズアレンジのための事例に基づくリズム転写", 電子情報通信学会2014年総合大会 学生ポスターセッション, ISS-SP-396, p. 225, Mar. 2014. [IEICE]
  • 佐藤 直人, 酒向 慎司, 北村 正, "自動ジャズアレンジのための事例に基づくリズム転写", 情報処理学会研究報告 音楽情報科学(MUS), Vol. 2015-MUS-107, No. 21, pp. 1–2, May 2015. [CiNii]
  • 佐藤 直人, 酒向 慎司, 北村 正, "自動ジャズアレンジのための事例に基づくメロディ変形", 情報処理学会第78回全国大会, 2Q-06, pp. 457–458, Mar. 2016. 【大会奨励賞受賞】
  • 松本 優太, 酒向 慎司, "シリンダーオルゴールを対象としたFCNによる自動編曲", 情報処理学会第85回全国大会講演論文集, 1T-05, pp.491–492, Mar. 2023. [IPSJ]
  • 小木曽 雄飛, 酒向 慎司, "Transformerを用いたファミコン風自動編曲手法の検討", 情報処理学会第85回全国大会講演論文集, 1T-07, pp.495–496, Mar. 2023. [IPSJ]