アパート入居までに必要なものは飛行機の手荷物で持参したが、持ちきれない生活用品は郵便局の国際郵便小包で別送した。半年とはいえ、家族4人分の荷物は最小限にしたつもりでもそれなりに多くなってしまい、大き目の段ボール箱2つになった。海外へまとまった荷物を送るのは厄介なことが多い。箱に詰めて宛名を書くだけでは済まされず、個人用といえどもインボイスを書かなければいけない。それに、日本のような過剰に行き届いた宅配サービス(到着時間の細かな指定や再配達)も期待できない。
発送
出発の2週間ぐらい前には既にアパートの入居日が決まっていたので、できればその日以降に届くようにしたい。しかし、配達するのは現地の郵便局や配達業者であり、日本で荷受けする時にそんなことは指定できない。国際郵便小包の配送はドイツ国内ではDHLが行うらしいが、DHLにはいわゆる再配達のシステムが無いことが事前に分かっていた。つまり、配達時に不在の場合は後から支店まで取りに行くことになるらしい。
もし入居前に届いてしまうと、重い荷物を支店まで取りに行くことになるので、それは避けたい。そもそも入居前に届けようとしたら、宛先不明のような扱いになってしまわないかと心配にもなった。いろいろ考えた末に、あえて配達に時間のかかるSAL便を使うことにした。日本出発直前に発送したら、すこし遅れて入居後あたりに届くのではないかと思ったから。もし早く届いてしまった時に備えて、宛名伝票に「この宛先の住人は〇月〇日以降しか住んでいません」と書いておいた。しかこの考えは甘かった。
荷物が現地に到着
ミュンヘン到着後しばらくしてから、国際小包の追跡番号を調べると、SAL便にしては早いペースで荷物が到着していた(普通の航空便と同じペース)。期待に反して、入居前に荷物が届けられ、すでに支店に戻っていることが分かった。しかし、ここで追跡できたのは片方の荷物だけで、もう一つはフランクフルトを通過した後の記録が出てこなかった。一緒に送った荷物だから大丈夫だろうと気にしていなかったが、後述するように片方の荷物は税関に引っ掛かってしまった。
支店へ引き取り
DHLの荷物追跡で調べると、持ち帰った支店が記されているので、どこに行けばよいかはすぐにわかった。その支店は中央駅から16,17番トラムで数駅移動したところにあり、集配所が一緒にあるような大きな支店だった。そこへ荷物を受け取りに行くと、再配達が無い仕組みのせいか、受取の窓口は沢山の人が並んでいたので探すまでもなかった。
入居前に持ち帰っているので、不在票にあたるものは持っていない。DHLの荷物検索の結果には荷物番号に相当するものが書かれているようなので、それを印刷して持って行った。「窓口で、この荷物があるはずだけど..」と聞いてみると、すぐに調べて持ってきてくれた。受け取りはパスポートと居住地登録確認票が必要だった。もう1つの荷物も調べてもらったが、その支店には届いていないらしかった。
この支店は市街からは少し離れているので、タクシーはあまり通らない。とりあえずトラムに乗って中央駅まで移動した。郵便局で荷物を引き取って乗る人もちらほら見られたのと、こちらでは大きなベビーカーも乗り込んでくるので、段ボール箱を抱えて乗っても、そんなに違和感はなかった(と思う)。中央駅のトラム乗り場のすぐ近くにタクシー乗り場があるので、そこでタクシーに乗り換えて自宅まで持ち帰った。
税関へ引き取り
もう一つの荷物の行方は、しばらくして届いた郵便で税関で止まっていることが判明した。荷物の伝票と1枚の紙が同封されていて、2週間以内に税関に取りに来るようにと書かれていた。受け取りに必要なものはこの紙、ID、課税されたときのための現金らしい。税関の住所や最寄駅、営業時間もその紙に記されていた。
税関で止まってしまったことは仕方ないにしても、大きな荷物をどうやって持って帰るかが問題だった。最終的には空のスーツケースと背中に担げるトローリーを持参して、その場で詰め替えて来ることにした。普通のタクシーでは、箱のままトランクに荷物を置くのは厳しく、往復をタクシーで行くのはお金がかかりそうだった。いずれにせよ詰め替えは必要で、駅から歩ける距離だと思ったので自力で行くことにした。
税関はミュンヘン市内から遠く離れた場所にあり、地下鉄のU6で北に30分ほど移動し、巨大なサッカースタジアムを越えたところにあるGarching-Hockbrückという駅の北西にある。駅を降りるとビジネスホテルがある以外は、広い道路と農場が広がっている。駅から1Kmほどで歩いても20分かからない距離だが、駅から出ているバスで行くなら292系統に乗れば税関の近くまで行くように見えた(実際には乗ってない)。税関への道のりは、駅の西側にある南北に走る大きな通りを北に向かい、左手に見えるBMWの店を越えて、Diesel通りを左(西)に曲がってしばらく行くと左手に税関(Garching-Hochbruck)が見える。オフィスは小さいが、裏側にトラックが沢山止まる集配所のようになっている。Zeppelin通りから行くほうが近いが、裏側(トラックの駐車場)から入るのですこし分かりにくい。
車が沢山行き交う道路脇を歩いていると、こんなところを歩いているのは誰もいないだろうと思えてくるが、税関に行って戻ってきたらしい人と何回かすれ違った。税関の建物に入って、窓口で郵便で送られてきた用紙を渡す。荷物を引き取りに来たと伝えると、見覚えのある箱がキャリーに乗せられて運ばれてきた。
特に中身を開けてチェックすることは無く、中に何が入っているかを聞かれて個人で使う日用品だと言うとすんなり引き渡してくれた。何のために税関で止まったのか分からないぐらいあっさり終わった。当然ながらすべて非課税で0円だった。
問題は30kg近い荷物をどうやってアパートまで持って帰るかで、想定していた通り中身を箱から出して詰め替えて帰らなくてはならない。箱(もともと頑丈な段ボール箱で、随所に補強されさらに頑丈)の処分も気がかりだった。とりあえずオフィスの脇で、ここで詰め替えてもいいか聞いたら、親切にも段ボール箱を捨てる場所や、駅まで戻る道まで教えてくれた。(いやいや、ここで親切にするぐらいなら、最初から税関で止めないで欲しいのだが..) なんとか荷物の詰め替えが出来て、スーツケースとトローリーを担いで駅まで歩いて戻った。